敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
この日も無事に演奏を終えて、退場しようと歩き始めた時、どこからか一際熱い視線を感じた。
ほとんどのお客様の目が自分に向けられていることはわかっている。
でも……その多くの視線とは全く違う、まるで刺さるかのような熱い視線。

俯きがちだった顔をわずかに上げて、その熱い視線を探った。



ーしゃ、社長……ー



私と目があった社長は一切視線をそらすことなく、拍手をしながらより熱く見つめてくる。
恥ずかしさと見つかったかもしれないという焦りから、私は目を逸らして足早に控室に向かった。



バクバク鳴る胸を押さえ、必死で気持ちを落ちつかせた。
大丈夫。
きっとバレてはいない。
それに、悪いことをしているわけじゃない。

知られてしまったら仕方ないけど、できればここで知っている人には会いたくない。

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