敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
どことなくビクビクしながら、翌土曜日もやとり木にやってきた。
不安はあったものの、中途半端な演奏はしたくないと、気持ちを入れ替えた。
できるだけ、観客は見ないように……
ーガーシュウィン 〈ラプソディー イン ブルー〉ー
シンフォニックジャズの名曲。
優れた指揮者であり、ピアニストでもあったバーンスタインの弾き振りでこの曲を聴いた時の感動は今でも覚えている。
私もあんな風に弾きたいと強く思ったものだ。
ただ、BGMになりきれない曲かもしれない……
柿本さんに相談をしてみた。
「最近は、神崎さんのピアノを聴きに来るお客様が大部分だから、かまいませんよ」
と言われて弾かせてもらうことにした。
私にはオーケストラとの共演経験がない。
だから、何度も何度も聴いたあの曲を思い浮かべながら弾いた。