敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
それから柿本さんが言っていた通り、社長は私の演奏をする日は毎晩来店して、同じ席に座っていた。
演奏後はいつも熱い視線を向け、拍手をおくってくれる。
そして、名刺を預けていく。
私はどう反応して良いかわからなくて少し戸惑っていたものの、会社で何かを言われることはなかったので、ホッとしていた。
社長がやとり木に通うようになって少しした頃。
ここのところ生演奏の日に来てくださる方が多くなってきて、予約が取りづらい日が出ていたらしい。
そこで、お店側はレイアウトを変えて席数を増やすことにした。
もともとすごく余裕のある配置だったから、それほど窮屈にはならなかった。
ただ、少しだけピアノと客席が近づき、出入りの時にお客様の近くを通ることになった。
演奏には全く支障はないから大丈夫そうだ。