敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
敏腕社長が動き出しました。
「神崎さん」

月曜日の朝。
会社のエントランスに着いて早々に呼び止められた。

「しゃ、社長……なんでしょうか?」

「君に少し話したいことがあります。今日の終業後、ここで待っていてください」

「しゅ、終業後ですか?ちょっと用が……」

「やどり木のことです、と言えばいいでしょうか?」

「……な、なんのことでしょうか……」

「とりあえず、今夜、食事をしながら少し話をさせてください」

「……わかりました」


やっぱり気付かれてしまったんだ。
あの社長の意志の強そうな目に見つめられたら、ごまかすことはできない。


これほど仕事に集中できなかった日はないと思う。
終業後のことを考えると、憂鬱でしかない。

「はあ……」

何度ため息をついたことやら。


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