敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
終業後、重い足取りでエントランスに向かった。

見つからなかったら、そのままこっそり帰ってしまいたい、、
そっと辺りを見渡すと、ソファーに社長が座っているのを見つけて、小さくため息を吐いた。


「社長、すみません。お待たせしました」

「ああ、よかった。ちゃんと来てくれた。
まあ、逃げられないように早めに来ておいて、何が何でも捕まえるつもりでしたが」

そう言うと、社長はくすりと笑った。

「この近くのお店に予約を入れてあります。すぐなので歩いて行きますよ」

社長は私を促しながら歩き始めた。
私は、社長の一歩後ろを歩く。

はあ……

俯きながら、連行されるかのようにトボトボ歩いていた。

ふと社長は振り向いた。

「神崎さん、何も叱責するために呼んだのではないので大丈夫ですよ」

そんなふうに言われるほど、私から悲壮感が漂っていたのだろう。
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