敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
不意に目を開けると、白い天井が目に入った。
少しだけ手を動かすと、

「神崎さん、目が覚めましたか?」

と、社長が私の顔を覗き込んできた。

「えっと……?」

「ここは病院です。先ほど、あなたは自転車にぶつかりそうになったんです。事故は防げたのですが、急に意識をなくしてしまったので、病院に運びました」

「す、すみません。ご迷惑をおかけしました。
私、どうしちゃったんだろう……」

「迷惑なんかじゃない。それよりも、無事で良かった」

そう言うと、社長は私を優しく抱きしめた。

「しゃ、社長?」

「すみません。もう少しこのままでいさせてください。あなたに何かあったらと思うと、怖くて仕方がなかった」




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