敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
しばらくすると、社長は私を離した。


「神崎さん、意識を失う直前にあなたは突然震え出して、お姉さんへの謝罪を口にしていた。何かあったのですか?」

「そ、それは……」

「すみません。目を覚ましたばかりなのに。
とりあえず、意識が戻ったことを担当医に伝えましょう」

社長は、それ以上追求してこなかった。



しばらくすると、担当医がやってきた。

「脳に異常はありませんでした。
これまでに、こうやって意識を失ったことはありましたか?」

「いえ、ありません」

「そうですか。もしかすると、ストレス性のものが原因かもしれません。
とりあえず、今日のところはこれで帰っても大丈夫です。
念のため数日間は1人にならない方がいいでしょう」

「わかりました。注意しておきます」

「えっ?」

言いかけた私を、社長は手で制した。

「また何かありましたら来てください」

「はい。ありがとうございました」



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