敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
医師が退出すると、社長は私の方を向いた。

「さあ、神崎さん、帰る用意をしますよ。
神崎さんは、確か一人暮らしでしたよね？」

「そうですけど……」

「医師も１人にしないように言われていたので、今夜から数日間、うちへ来てもらいます」

「社長のお宅に！？」

「まずはあなたの部屋によって、必要な荷物を取りに行きましょう。少なくとも、一週間はうちにいてもらいますから」

「こ、困ります。そんなこと」

「落ち着いください。身体にさわりますよ。
とにかく、さっき倒れた人を１人にさせることはできません。
どうしても困ると言い張るなら、これは上司命令ととってもらってかまいません。
さあ、行きますよ」

じょ、上司命令……

きっと、社長は私が何をどうあがいても自宅に連れて行くつもりなんだろう。
それに、社長の話も気になるところ。



「わかりました。そこまで言われるのでしたら、数日間お世話になります」

そう言って、頭を下げた。
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