敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
姉が高校3年生で、私が高校1年生の冬休みのある日。
ドイツ留学を目前にした姉は、日本で過ごす時間を満喫しようと、私を連れ出してショッピングやスイーツ巡りを楽しんでいた。
人気のクレープを食べたり、洋服を買ったり。
仲良し姉妹だった私達は、春から離れ離れになる寂しさを埋めるように、お揃いの物なんかを買って楽しい時間を過ごしていた。


その帰り道、青信号を確認して横断歩道を渡り始めた時、凄い勢いで右折する車がいた。
姉は咄嗟に私をかばったものの自身は避けきれず、怪我を負った。
私は打ち身だけですんだのに対し、姉は足の骨折と手首と指の複雑骨折を負った。


時間をかければ怪我は治る。
でも、ピアニストを目指す姉には、複雑骨折は致命的だった。


姉はピアニストになる夢を諦めた。


そして、私もピアノを弾かなくなった。
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