一緒にいるよ
『せめてさ、もう少し穏やかに対応しようよ。
こうやって普通に話せるんだから。』


聞けば、皐月は喧嘩を売られる事はあっても
自分から喧嘩を売ったり、相手を挑発したりはしてないと言う。


皐月と会話をするようになって
それは本当の事なんだろうなって思った。


話が通じないわけじゃないし、言ってることもそこまで理不尽なものじゃない。
価値観の違いで受け入れられる程度のもの。



『喧嘩を買わないって選択肢もあるんだし。』

『……いらいらすんだよ。あいつら見てると。』


さっきよりもさらに苛立ちを滲ませた声で皐月は呟いた。


『口を開けば、才能の持ち腐れだなんだと、説教じみたことばかり。
…………あいつみてーなことばかり言うから。』


『あいつ?』








『……ほら。もう帰れ。』


聞き返した私の言葉を無視して、皐月はしっしっと追い払うように私に手を振った。





皐月の言う『あいつ』が皐月の父親の事なのだと知ったのはその後の事。
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