real face
「それでは、さっき指摘された部分を仕様変更してから、最終仕上げに入ります。来週辺りにでも連絡しますので」

「分かりました。宜しくお願いします」

密度の濃いディスカッションは終了し、最初に通された応接室でお茶を戴くことになった。

「それにしても、今日は無理だと言われたから諦めていたのに。ほんの15分くらいでまた電話が掛かってきたから何事かと焦ったよ」

「……私が電話掛けたとき、龍崎さんは席を外してたんじゃないんですか」

「あ、やべ。いや、席を外してたのは嘘じゃないよ。同じ部屋には居たけどね」

バツが悪そうにペロッと舌を出して見せた、貴浩部長。
呆れた顔を隠そうともしない佐伯主任。

「あの、貴浩部長。私たちが来たときに、休憩まだだって仰ってましたよね。すみませんでした」

「ははっ、ありがとう蘭さん。その一言で元気が出るよ。もう少し元気になりたいから、また今日も俺の休憩に付き合ってよ」

「失礼します。部長、会長から差し入れを頂きましたので皆さんでどうぞ」

事務員さんらしき女性が、ケーキとコーヒーを持ってきてくれた。

「ああ、ありがとう。さ、佐伯さんも蘭さんも召し上がってください。どうぞ」

美味しそうなケーキ!
佐伯主任は甘いもの嫌いじゃないのかな?

「じゃ蘭さん、せっかくだから、お言葉に甘えようか」

「主任、甘いもの大丈夫なんですか?」

小声で囁くように聞いてみた。

「ん?知らなかった?」

……知らないし!
男の人って甘いものダメな人が多いようなイメージだし、主任もてっきり苦手なのかと思ってた。
意外な一面を見た……。

それなら、お菓子作ってあげたら喜んでくれるかな?
ケーキとか、作るの得意だし。

「蘭さん、このケーキ"Many cakes"のなんだよ。知ってる?」

知ってる!
だって美味しいって評判で人気のお店だし!

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