real face
第9話

ようこそ、蘭家へ

──6月11日。

今日は土曜日。
佐伯主任を食事に招待しているため、昨夜はドキドキしてあまり眠れなかった。

今日の私のスケジュールは……。
午前中に買い出しに行って、午後イチでケーキを焼いて、ひと休みしてから晩御飯の支度。
主任には18:00に来てもらうように約束している。

それにしても、私ったら大胆なことをしてしまった。
まだデートすらしたことがない私たちなのに、いきなり家に呼ぶなんて。

主任も主任よね。

『お邪魔してもいいのか……?』

『あ、突然すみません!うち、家族が多いし困りますよね、やっぱり』

『いや、困らないけど。蘭さんの手料理を食べさせてくれるんだろ?次のシフトいつ入ってるんだ?』

『今度の土曜日です……』

『休みだし、予定も入ってない。決まりだな。楽しみにしてる』

てな感じにトントン拍子に決定。
勝手に決めちゃって良かったのかな。

まず、母に相談することにした。

「あのね、お母さん。実は私いま、お付き合いしてる人がいるんだ」

「あら、まひろ。彼氏ができたのね?おめでとう!」

「ありがとう。それでね、今度の土曜日って私シフト入ってるでしょ?その彼氏を晩御飯に招待しようかなって思っているんだけど……。いいかな?」

「ここに?お母さんは別にいいけど。っていうか大歓迎よ!だって初めてじゃない、まひろが男の人を家に呼ぶなんて。お母さん嬉しいわ!」

……なんて具合に、こちらもトントン拍子で許可をもらうことができた。

よし、次は小舅……モトイ、新と信か。

「信、あれ?新は?」

「コンビニ行ってくるって。俺、プリン頼んじゃったし」

「え!私も頼みたかった……って、そうじゃなくて。今度の土曜日、お客さん来るから。以上」

「あ、おい、姉貴!お客さんって誰だよ!!」

「私の上司。以上」

「なんだって?鬼主任襲撃か!」

コンビニから帰って来た新からも、当然の如く追及された。

「姉貴!信から聞いたけど……。鬼主任が家に来るって、どういうこと?」

「え、そのまんまだけど。あ、一応お客さんなんだから、面と向かって『鬼主任』なんて言うのやめてよね。『佐伯主任』だからね!」

「送ってもらったって言ってた人だろ。姉貴の彼氏なのか?」

「……うん。そうだよ。付き合ってるの」

「ふーん。俺たちも居ていいのか?邪魔じゃね?」

もしかして、気を遣ってるつもり?

「いいのよ。ちゃんと紹介したいから。彼にも確かめたけど、5人家族だって事も知ってるし」

「そうか……。シフト代わってやろうか?」

「それじゃ意味ないでしょ!私が作った料理を食べてもらいたいんだから」

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