real face

初デート

酸欠になりそうな長い長いキスのあと、腰が砕けてしまった私。
自分の力だけでは立っていられない程で、主任に支えられながらも足がフラフラだ。

「この状態で帰すわけにいかないな。ちょっと車に乗って」

「何処に行くんですか!」

「行かないよ。ちょっと座って落ち着いてから帰ったほうがいい。そんな挙動不審じゃ怪しまれるだろ」

もう……誰のせいよ。
だけど足も腰もガクガクしてるから、このまま帰るのは無理だ。
公園で話してきたって言えばいいかな。
あ、でも公園と言えば新に見られてるし、尚更怪しいかな。

「蘭さん、明日は予定入ってる?ああそう、じゃ朝9:00頃に迎えに来る」

「ちょっと待って、まだ何も返事してない!」

「さっき帰る前にお母さんの許可は取った。シフトも気にしないでゆっくり出掛けてこいってさ」

いつの間に……!
さすが仕事が早い、じゃなくて……。
でも、嬉しい。

「何処に行きたいか考えといて。決まったら夜にでもメールすること。いいか?」

「はい……。何処でもいいんですか?」

「蘭さんが行きたいところなら何処でもいいけど。初めてのデート、だからな」

初めてのデート……!

私たち、あんな風にキスをしたりするけど、まだデートしたことがないなんて。
順番間違えてるよね。

「じゃあ、あとでメールしますね。主任は何時頃まで起きてますか?」

「いつも0:00は過ぎてる。大体1:00前後くらいに寝るかな」

私と同じくらいだ。
でも明日デートならお弁当作りたいから、少し早めに寝た方がいいかな。

「もう足、平気か?あんまり遅くなるとマズイだろ。1人で帰れるか?」

うん、もう大丈夫。

「帰れますよ!それではまたメールしますね」

ドアを開けて降りようとすると、右手を軽く引かれた。

「主任、どう……」

振り向いて『どうしましたか?』と聞こうとした言葉は途中で遮られた。

< 142 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop