real face
日曜日の朝から車で出掛けるなんて滅多にないことだから、普段の混み具合がよく分からないけど、道は渋滞することもなく、目的地の遊園地まで1時間もかからなかった。

開園時間は10:00。
門の前には何組かのグループが、開園の時を待ち構えている。

「……早すぎたな」

「あ、チケット先に買っておいた方が良くないですか?」

待っている人たちは皆、チケットらしき物を手にしている。
チケット売場は入場ゲートの隣にあるようだ。
今のうちにとチケット売場へと走ろうとする私を

「おい、待てって!」

何故か引き留める主任。
ポケットから出したものを手渡してきた。

「え、主任コレって……」

入場券と、場内のアトラクションどれでも自由に楽しめる"フリーパスポート"だった。

「いつの間に用意したんですか!だって……」

私が遊園地に行きたいとメールしたのは、昨夜11:50頃。
日付が変わる直前だから、それからチケット購入するなんてできる?
ここに到着したのはついさっきだし。
首を捻って主任を見ると、耳がちょっとだけ赤く染まってるような気がした。

「……そのうち行くだろうと思って、事前に買っておいたんだよ。役に立って良かった」

よく見ると、このチケットってコンビニで購入するタイプのやつだ。
私もコンビニでチケットを買うことがあるから、見覚えがあると思ったんだ!
このチケットの発行日は……。
6月1日となっている。

あの日だ。
ファーストキスからちょうど2ヶ月後。
2回目のキスを交わした日。
その時から、私と遊園地に行くつもりでいてくれてたの?
それなら主任から誘ってくれれば良かったのに。

「ありがとうございます。さすが主任ですね!用意周到なところが」

「俺を誰だと思ってる?当然だろ。そろそろ開くだろうし、行くぞ」

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