real face
「キャー!!!!!」

私は一体、何回こんな叫び声をあげたことか。
隣の佐伯主任はさぞかし煩かっただろう。
周りの人たちも叫んでいるのだろうけど、全く聞こえないのは自分のせいだ。
主任のリアクションすら把握出来ていない。

「そんなに叫びまくってたら、喉を痛めるぞ。次はどれにする?」

「だ、だって。主任が絶叫マシンばかり選ぶから」

「じゃ、次は蘭さんが決めろよ。ちょっと大人しい奴でもOK」

「さっきから却下してるようなのでも?」

「ああ、次は決定権やるよ」

よっし……こうなったら!

「じゃあ、アレにします」

私が指差した先にあるのは……。

"メリーゴーランド"

「あ、比較的空いてるみたいじゃないですか。さっ早く並んじゃいましょ!」

「……俺は、パス」

あ、ズルい!

「ダメです!私に決定権あるんですから、さ、行きますよ~」

嫌がる主任の腕を取って、メリーゴーランドへ向かう。

「俺、あっちで見てるから、1人で乗ってくればいいじゃないか」

「やだ!1人でなんて寂しいじゃないですか。デートなんですから一緒じゃないとダメ」

逃げようとする主任の腕にギュッとしがみつき、列の最後尾で待っていると、入れ替えになったようで前に進みだした。

「子供だらけの中にいてよく平気だな」

不満げにブツブツ文句を言ってるけど、もう諦めたのか逃げる様子はない。
私たちまでギリギリ入れたところで、走ってきた女の子が泣き出した。

「まって~!!のせて~!!」

「お嬢ちゃん危ないから下がってないと危ないよ!」

係員のおじちゃんが止めるのに必死だけど、女の子も必死だ。

「すみません!サチ、ほらこっちに来なさいっ」

お母さんかな、おじちゃんと一緒になって女の子を止めてる。

「いやだ!のせてよ~おねがい~」

「お嬢ちゃん、次乗せてやるから、な!」

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