real face
第11話
夏はBBQと相場は決まっている
「…………どういうこと?」
「だからね、そういうことよ。佐伯主任は私を選んだってことよ」
「待ってよなつみん!イチにぃは?」
「……とぼけないでよ。本当はお互い好き同士だったくせに。だから、返してあげる。ついでにそのマスコットもね」
「なつみん!ちょっと待って、なつみん!!」
──ジリリリリリリリ……。
はっ!!
また嫌な夢を見ていた。
ぎゅっと握り締めた手の内にあるのは、私がなつみんにプレゼントしたクマのマスコット。
なつみんにあげたはずのマスコットをどうして私が持っているのかというと……。
拾ったから。
だったら直ぐになつみんに返せばいいのにまだ返せずにいるのは、拾った場所に問題があるのだ。
それは、セミナーの1週間後のこと。
佐伯主任が私をドライブに連れていってくれたときだった。
助手席に座ったとき、足で何かを踏んでしまったのに気付いた私は、手で足元を探り拾い上げた。
それがこのクマのマスコット。
あぁ、やっぱり見間違いでも勘違いでもなかった。
あのとき見たのは紛れもない事実だったのだ。
よっぽど力強く握っていたのか、形が歪んでしまっている、クマちゃん。
あなたに罪はないのに……。
「ごめんね」と呟き形を元に戻したけど、私の心は歪んだままだった。
──7月半ば。
佐伯主任と2人で、蘭会計事務所での打ち合わせに来ていた。
ここに来るのは何回目になるだろう。
以前ほどガチガチに緊張することはなくなったものの、やはり落ち着かない。
頼りにしている佐伯主任にも、つい疑いの目を向けてしまう自分が嫌でたまらない。
なつみんとここに一緒に来たのはなぜ?
聞きたいのに、聞けずにこうしてモヤモヤしてしまう。
私から聞かないと、教えてくれないの?
例え私が目撃してなくても、話してくれるはずでは?
……やましいことが何もないのなら。
今日の打ち合わせも無事に終了。
ホッとして帰り支度をしていると、霧島さんがコーヒーを淹れてきてくれた。
「宮本さん、もうお誘いしたのですか?例のアレ」
「いや、今から話すところだ」
何の話なんだろう。
「だからね、そういうことよ。佐伯主任は私を選んだってことよ」
「待ってよなつみん!イチにぃは?」
「……とぼけないでよ。本当はお互い好き同士だったくせに。だから、返してあげる。ついでにそのマスコットもね」
「なつみん!ちょっと待って、なつみん!!」
──ジリリリリリリリ……。
はっ!!
また嫌な夢を見ていた。
ぎゅっと握り締めた手の内にあるのは、私がなつみんにプレゼントしたクマのマスコット。
なつみんにあげたはずのマスコットをどうして私が持っているのかというと……。
拾ったから。
だったら直ぐになつみんに返せばいいのにまだ返せずにいるのは、拾った場所に問題があるのだ。
それは、セミナーの1週間後のこと。
佐伯主任が私をドライブに連れていってくれたときだった。
助手席に座ったとき、足で何かを踏んでしまったのに気付いた私は、手で足元を探り拾い上げた。
それがこのクマのマスコット。
あぁ、やっぱり見間違いでも勘違いでもなかった。
あのとき見たのは紛れもない事実だったのだ。
よっぽど力強く握っていたのか、形が歪んでしまっている、クマちゃん。
あなたに罪はないのに……。
「ごめんね」と呟き形を元に戻したけど、私の心は歪んだままだった。
──7月半ば。
佐伯主任と2人で、蘭会計事務所での打ち合わせに来ていた。
ここに来るのは何回目になるだろう。
以前ほどガチガチに緊張することはなくなったものの、やはり落ち着かない。
頼りにしている佐伯主任にも、つい疑いの目を向けてしまう自分が嫌でたまらない。
なつみんとここに一緒に来たのはなぜ?
聞きたいのに、聞けずにこうしてモヤモヤしてしまう。
私から聞かないと、教えてくれないの?
例え私が目撃してなくても、話してくれるはずでは?
……やましいことが何もないのなら。
今日の打ち合わせも無事に終了。
ホッとして帰り支度をしていると、霧島さんがコーヒーを淹れてきてくれた。
「宮本さん、もうお誘いしたのですか?例のアレ」
「いや、今から話すところだ」
何の話なんだろう。