real face
「まひろが叔父さんの後を継いで公認会計士になりたいって言うから、俺は力になってやりたくて同じ道を選んだ。だけどまひろはその夢を自ら放棄してしまった。そりゃ両親があんなことになっちまったんだから傷ついただろうし仕方ないよな。だけど俺は途中で投げ出すのが嫌だったんだ。まひろが諦めたからこそ、俺がやり遂げなければいけないって……」

俺も有田さんも黙って修の話を聞いていた。
修がどんなに真剣に蘭さんの事を想っていたか、伝わってくる。

「だから北国で修行してる間は必死だった。早く堂々とまひろを守ってやれる男になりたくて、会いたい気持ちを無理矢理抑え込んでた。……そしてあっという間に6年が過ぎた」

「6年間、ずっと会わずにいたんですか?」

有田さんが、遠慮がちに修に問いかけた。

「ああ一度もな。だけど6年って短いようで、長かったんだよな」

急に遠い目をして、フッと息を吐いた修。

「俺、ずっと変わらずにいられるって思ってた。まひろに会えなくても、俺の気持ちは変わることないって本気で思っていたんだ。……だけどさ、人の気持ちが変わらないなんてこと、ないんだよな」

え?
なにを言い出すんだ修……。

「俺っていつも自己中って言われるし、いつも自分の事しか考えてないって。そうなのか?翔」

「そうだな。お前って自己中だよな」

「佐伯主任!そんな風に言わなくても!!」

俺が否定しなかったから有田さんが慌ててるけど、実際そうだろ。
自己中じゃなきゃ今みたいな状況になってないだろ。

「だからさ、北国でもずっと考えてたんだ。まひろの幸せのために俺ができる事ってなんだろうなって。公認会計士になるための努力は惜しまなかったけど、時間がある限り考えてた。まひろを幸せにする方法を」

自己中なところは難点だけど、努力家なのが修の凄いところなんだよな。




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