real face
「それで、長い時間かけて考えて分かったんだ。まひろを幸せに出来るのは……俺じゃないって」

「まさか、それって。修、お前……」

修は俺の言葉に答えようとはせず、最初に座っていた場所に戻って有田さんと向き合った。

「有田さん。兄貴がどうして貴女と付き合っているのか、俺はすぐに分かったよ。貴女は分かっているのか?」

「………………どうしてですか?」

「有田さんはまひろの親友なんですよね。まあそれもあるかも知れないが、それだけじゃない。有田さん、貴女はまひろとよく似ている。雰囲気とか、性格とか。昔、似た者同士なんて言われたんじゃないですか?」

確かに、蘭さんと有田さんは似ているかもしれない。
だけど、蘭さんと有田さんは……。

「貴女は兄貴にとって、まひろの身代わりみたいなもの。貴女自身を好きになったわけじゃないんだよ。兄貴がどんなにまひろを大切に想っていたか……俺は知ってる」

初めて耳にする、修の本音……なのかもしれない。

「兄貴はまひろが従妹だから、恋愛関係になる訳にはいかないって。まあ確かにうちの親も歓迎はしないだろう。実際、うちの母と所長……まひろの父親はいとこ同士で、昔ちょっと困ったことがあったらしいし」

親同士がいとこっていうのは聞いていたが、なんかあったのか。

「だけど、俺はそれだけじゃないと思う。昔はどうだか知らないが、今時いとこ同士で結婚なんて珍しいことじゃない。親が反対しようが本人たちが本気なら、説得すればいいだけだ」

確かに、そうかもしれないな……。

「俺もそう思うよ。本人たちの気持ちが本物ならな」

もし、イチにぃと蘭さんが本気でお互いを……。

「余裕ぶってんな翔。お前、平気なのか?」

「……何が言いたいんだ」

「翔には話したはずだけど。まひろは俺じゃなく、兄貴の方が好きだって。まひろも兄貴も、お互い好き同士なのに、知らずにいたんだよ。両想いだってことに気付かなかっただけなんだ」


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