real face
「私が一弥さんとまひろの仲を誤解してると気付いて、一弥さんはまひろと私の前できちんと説明してくれました。まひろが会社の誰にもいとこ同士って関係を知られたくなかったから隠していたと。そして、その時に……私のことを好きだと言ってくれたんです」

「兄貴がまひろの目の前で、有田さんに好きだと?血迷ったのか……」

修、相当混乱しているようだな。
大方、イチにぃが有田さんと付き合っているのはフェイクだとでも思っていたんだろう。

「その後、修一さんが帰ってくることになって、一弥さんはまひろのことを心配してました。私は修一さんのことを知らなかったので、なにをそんなに心配しているのか分かりませんでしたけど」

「どうせ兄貴のことだから、俺がまひろに強引に関係を迫るつもりだとでも思ったんだろうな。どんだけ俺のこと悪者扱いすれば気が済むのか……」

お前の日頃の行いが物を言うんだろ。

「私とまひろが一緒にいるときに、修一さんと霧島さんが偶然来たことありましたよね?」

「ああ、初対面のあの時か。確か兄貴が土日出張だったんだよな」

「はい、実はその予定だったんですが、かなり無理して仕事を早々に終わらせた一弥さんは日帰りで土曜日の夜に帰ってきたんです」

ああ、そんなことがあったな。
修や蘭さんには内密にと箝口令を敷かれたあの時だ。
俺たちの"協定"も"M"作戦も、あの時から始まったんだからな。

「だから修一さんと初めて会ったあの日の夜に、一弥さんは私にまひろのことを打ち明けてくれました」

「打ち明けたって……何を?」

「一弥さんが、まひろのことを本気で好きだったってこと……」

"好きだった"
過去形だよな。
今は、違うんだよな、そうだろ?
イチにぃ……。

「修一さんから何か吹き込まれる危険があるから、そうなる前に自分の口で事実を隠さず話すと」


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