real face
番外編

ありのままの私を

※秘境渓谷、小屋での2人とその後の2人




──17:00頃

床に胡座をかいていた主任が立ち上がって私に近付いてきた。
椅子に座ったままの私を軽々と抱え上げて、今度はテーブルに腰掛けさせたかと思うと、そのまま唇を重ねられ……。

また、深い深いキスが始まった。

主任とのキスは身も心も溶かされるように、キモチイイ。
息継ぎはまだ上手くできないけど、その辺は主任が解ってくれているから大丈夫……多分。

あっ、もう少し……。
何故か私が苦しくなる前に、離れてしまった唇。
つい未練がましく視線で追いかけるけど、主任の視線は私を通り越して背中の向こうに向けられていた。

「まさか、こんなところにも……ネズミが!?」

主任の呟きに首を傾げる私。

「………ネズミって?」

主任からの返事は帰ってこなくて、暫しの沈黙。
そして主任が口を開こうとした瞬間、小屋のドアが"バン"という派手な音と共に開けられた。

イチにぃと、なつみん。

「わっ、悪いな邪魔して。覗き見するつもりなんてなかったんだけど、忘れ物を取りに来たんだ」

忘れ物……?
そういえば、さっきからお尻に何かが当たってる。
バッグだ、これ確か、なつみんの。

「これでしょ、待ってて」

私はポケットに入れてあったマスコットを素早くバッグに付けて、バッグを手渡した。

「ありがとう……。あれ、なんで?なくしてたマスコットが!」

「なっ、なつ……なつみ!ごめん、あの、そのマスコットはね」

どうしよう……なんて言うか考えてないのに。

「実は……イチにぃ、そうイチにぃが隠し持ってたんだって!」

「は?」

ごめん!イチにぃ。

一瞬、氷のような冷たい視線で睨まれたけど、見なかったことにしよう。

「さっき私が取り返したから!だから、また菜津美が持っててくれる?」

「うん、もちろんOKだよ……まひろ」

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