real face
「晩飯はなんか買って帰るか。作ってたら遅くなるし、それは明日の楽しみに取っとく」

明日はもちろん、腕によりをかけて美味しい料理を作るつもり。

「じゃ、ピザが食べたいです!」

「了解。それなら宅配でいいか。さっさと帰るぞ、まひろ」

「…………はい」

初めての、彼氏の家にお泊り。




──23:25

うっうっううううう………。
涙が、涙が止まらない。

「もう、そんなに泣くなんてな」

「だって……。ごめんなさい」

「謝らなくてもいいけど」

すっかりくつろぎモードの私たちは、主任の部屋で映画鑑賞をしていた。
観ていた映画は、感動物というよりは恋愛物。
映画好きな主任のお気に入りの中から、私が選ばせてもらった。
主任の家に来てから映画を観るまで、多少の緊張はあったもののいい雰囲気だったのに……。

まさか、号泣する羽目になるとは。




──19:15

「……父さんに電話?」

家に到着して車を降りる前に、主任が不思議そうに聞き返してきた。

「主任のお父さんがお留守なのに、勝手に泊めてもらうなんて。私もちゃんと許可を頂いてからの方がいいです」

「分かった、ちょっと待ってろ」

そう言って携帯で電話をかけ始める主任。

「もしもし父さん翔真だけど。ちょっと今いい?うん、そうだけど何で知って……。ああ分かった、今代わるから」

何の話をしてたのか分からなかったけど、携帯を渡されて急に緊張が走る。

「もしもし、こんばんは。あの、初めまして!私、佐伯主任と……」

『まひろさん、かな。初めまして、翔真の父です。今日と明日は翔真の面倒みてやってください。私は明日もまだ帰りませんから、気兼ねなく自分の家だと思ってゆっくりしていってください!』

「は、はい、ありがとうございます。お留守にすみません、お邪魔させてもらいます。それから、弟たちがいつもお世話になってます。合宿中もどうぞよろしくお願いいたします」

豪快で気さくな感じの、主任のお父さん。

ちょっと圧倒されたけど、挨拶はちゃんと出来たよね。

『新と信は本当にお姉さん思いのいい奴等ですよ。クラスでも人気者だし。あ、もう翔真には代わらなくていいから。じゃ、ごゆっくり!』

< 200 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop