real face
私の代わりに課長と一緒に異動になったのは、私が同じ部署の中で一番信頼していた先輩。

"新・フューチャーセクション 海外留学サポート課 『藤本美里(ふじもと・みさと)』 旧・ラーニングセクション 教育事業部1課"

木原課長は異動後、海外に長期出張になる可能性が高い。
留学経験があり、語学力を生かせる仕事をしたいという希望を持っていた。
彼と会社側、双方の理に適った人事異動だと言える。
正に、適材適所を絵に描いたようなものだ。
その彼と一緒に異動するということは、彼女は彼のアシスタントになるであろうことは容易に推測できる。
木原課長と美里先輩の関係は、会社公認ということ。 近々、結婚ということも考えられなくもない。

"敗北感"

そんな言葉が私の心を埋め尽くしていた。


木原課長と美里先輩が男女の関係だったなんて、気が付かなかった。
だって全くそんな素振りを見せなかったし。

私は入社してからずっと木原課長に狙いを定めていたし、アプローチだってしてきた。
そんな私に木原課長はいつも優しく、お兄さんみたいな態度で接してくれた。
他の社員の前でも構わずに頭をなでてくれたり、耳元で甘い言葉を囁いたり。
だから課長は私に気があるんだって思っていた。

良き相談相手の美里先輩は、私の話をいつも聞いてくれていた。
私が課長を狙っている事も知っていたし、どうやってアプローチしたらいいのかも一緒に考えてくれた。
「頑張って!」って応援してくれていた……はず。

一体、2人はいつから…?
人事異動が発表になってから約1ヶ月、課長にも先輩にも真実を問いただせないままだった。

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