real face
第3話

私のキャパシティ

──金曜日。

昨日は食事の当番だったから残業しない予定だったのに、必死で作業してたらいつの間にか定時を過ぎていた。

今日は朝イチで佐伯主任に作成した資料を確認してもらわなければいけないので、いつもよりちょっと早めに出勤。

「おはようございます」

誰も居ないオフィスに入る時でも、朝の挨拶は習慣になっている。
もちろん返事は帰ってこな……。

「おはよう、蘭さん」

「うわぁ!!」

跳び上がるほどにビックリして声がした方に目を向けた。

「あ、佐伯主任……オハヨウゴザイマス」

「朝礼まで時間あるから、ちょっと聞いてもいいか?」

佐伯主任の手には、書類の束。
まさか私よりも早く来て待ってるなんて、なんか問題でもあったの?
とりあえず主任のデスクへと向かう。

「蘭さん、この資料は誰が作った?」

「……私、ですが」

貴方が私に指示したんでしょ。

主任は、書類と私を交互に見比べながら質問を続けた。

「じゃ、誰かに手伝ってもらったりとかした?」

「いいえ、私1人でやりました」

一体何が言いたいの、主任。

「わかった。じゃあ早速だけど、ここの表をもっと目立つように大きくしてくれ。この数字はグラフ化して……」

いくつかの修正を依頼され、私からも提案したり確認をとっている間に朝礼の時間となった。
特に問題点があった訳ではなかったのでほっとした。
確か主任は午前中席を外すって言っていたから、いない間に修正をしてしまおう。

……って思っていたのに。
佐伯主任、席を外すどころかデスクでPCと向き合ったままだし、午前中にずっとオフィスに居るのって珍しいかも。
それになんかチラチラこっち見てるような気配が。
なんか、やりにくいんだけどな。
もう少しで修正終わりそうだし、ここは集中集中っと。

「蘭さん、昨日お願いしてたデータの集計できてるかな?」

同じ1課の先輩、青木さんだ。
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