real face
「今夜?あの今日は元々こちらにお戻りの予定ではなかったんですか」

今日しか空いてないからって、打ち合わせを今日にしたんじゃなかったの?

「あ、しまった。口が滑ったようだ。佐伯さんが今日はワーセクとの会議が入ってて外せないと知って、今日しか空いてないということにしたんだ」

「どうして……ですか」

「どうして、か。強いて言うなら、蘭さんと2人きりで話してみたいと思ったからかな」

私と2人きりで……?

「ねえ、蘭さんってさ、自分の素顔を他人に見せたくないって……思ってるんじゃない?」

貴浩部長が射るような視線を私に向けていた。
私の内面を見透かしているかの様な、真っ直ぐな視線。
私が貴浩部長を苦手だと感じるのは、きっとこの視線を感じていたからだ。
いきなり核心を突かれて、かなりドキッとしてしまった。
なぜ?なぜこの人は、私の中の触れられたくない部分に……。

「ごめんごめん。直球すぎたよね。答えたくなければ無理に答えなくていいんだよ。興味があってつい。蘭さんって俺のこと苦手だって思っているっぽいしね。違う?」

図星だ。
この人、読心術でも心得ているのかしら?
それとももしや………。

「……エスパー?」

「認めちゃったね。そっかやっぱりそうか。分かってはいてもハッキリ認められちゃうとちょっとショックだな」

心の声が漏れてしまった?
慌てて口を塞いだけど、もう遅かった。

「すみません。でも仕事には支障無いようにしているつもりですので」

「確かに。仕事の話してる時には全く感じさせなかったから大丈夫だよ。じゃあちょっと話を変えようか」

よかった、話題を変えてくれるんだったら是非お願いしたい。
一気に力が抜けてホッとした。

「蘭さんは佐伯さんの事をどれくらい把握してるのかな」


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