real face
「佐伯主任、ですか?」

把握してるって、なにを?

「だって、コンビってことは信頼関係が大事でしょ?お互いのことを理解しあってこそ、信頼関係が生まれると思うんだけど。2人はどうなのかな?」

信頼関係?
確かに無いよりは有った方が良いに決まっているけど、私たちの場合は……お互いの何を把握しているというのだろう。

「……把握なんて、してません」

「まぁ、コンビ組むことになったのも突然だったみたいだし。まだ間もないから仕方ないよね。でもこれから上手くやっていくには、相手の事をよく知っておいた方がいいと思うけど」

「そうですね。いままでコンビを組むなんてことなかったので考えた事もなかったですけど、貴浩部長の仰る通りなのかも知れません」

自分の事を他人に知られたくないと、仮面を被り素顔を隠してきた。
だから、私も他人の事を知ろうともしてこなかったのだ、きっと。

「蘭さんと佐伯さんって似てるのかも知れないね」

「似て……ますか?」

「思い当たるところ、ない?」

私と佐伯主任が、似てる!?
暫く首を傾げて考えてみるけど、ちっとも分からない。

「あの、どの辺が、でしょうか?」

あっさり降参して、貴浩部長に聞いてみる。

「さっきも言ったけど、蘭さんって他人に素顔を見せないようにしてるでしょ。そういう所とか」

「そう言われれば、佐伯主任の素顔なんて想像できないですけど……」

あ、あのときのアレはどうなのかな。
歓送迎会の時の喫煙室で、2人きりになったことがあった。
酔っぱらっていたけど、アレは素顔の主任だったの?
なんかいつもと雰囲気違ってて、私も調子狂ってしまったし。
その挙げ句、キスされて……。

……………………!?
うわぁぁぁぁぁ!!
なぜ今それを思い出すのよ、私!!

「でっ、でも、それって!!」


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