real face
「なにも、佐伯主任や私だけに限ったことではないと思うんですが!誰にでも当てはまることじゃ……」

やだ、私なんでこんなに焦っているんだろう。
貴浩部長は相変わらずの余裕な笑顔で応える。

「そうだね。誰にだって言えることかも知れない。俺だってそうだよ。蘭さんから見て俺ってどんなヤツ?」

「貴浩部長、ですか」

「そう。蘭さんから見た"龍崎貴浩"という男って?」

私から見た、貴浩部長は……。

「そうですね。余裕があって、大人で、紳士的で。だけど……」

「だけど?」

「なんて言えばいいのか。物腰が柔らかくて人当たりがいいんですが、他人をあまり信用していないような、そんな感じがします」

ちょっと外していた視線を戻すと、見事に表情が固まったままの貴浩部長。
一瞬の沈黙、そして……。

「はっ!あっははははは!!ちょ、蘭さん、君って実は天然?」

え、私なんか可笑しな事、言った?

「あのさ……。蘭さん、それってさ、どっちかって言ったら、俺が人には見せたくない部分じゃあないのかな?」

「大人で、紳士的って事がですか?むしろアピールしたほうが良くないですか?」

「あはははは!だから、そっちじゃなくてさ。あれ、もしかして自分で言っておいて自覚ないとか」

…………思いっきり笑ってる!?
貴浩部長のこんな姿を見られるなんて、なんかレアかも。
いや、そんな呑気なこと考えてる場合じゃない。
考えがまとまらない内に喋ったから、苦手意識があるのを隠しきれなかったの?
無意識で喋ったんだろうけど……。

「もしかして、無意識だったのかな。だとしたら蘭さんすごいよ。俺が"他人を信用してない"って思うから、苦手なんでしょ。それなのに人当たりがいいっていうのが、胡散臭いんだね。どう?」


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