real face
『他人を信用してないような』

「あっ!すっすみません!!私……」

やだ、私ったらどさくさに紛れてなんてことを。

「そっか、蘭さんの中では俺って腹黒なヤツなんだ。大丈夫だよ気にしなくて。当たってるよ」

「違います、腹黒なんて思ってませんから。本当にすみません」

ああもう……とんだ失態だ。

「いやー鋭すぎてビビった。まさか蘭さんとこんな笑い合えるなんて思ってなかったから、楽しいよ。はははははは」

ははははは……なんて、私は笑えないってば。

「さて、もっともっと話していたいけど。これ以上引き留めちゃ迷惑だよね。時間があればこれから連れて行きたい場所があるんだけど、どうかな?」

「あ、私まだ仕事残ってるんで、社に帰らないといけないんです。すみません、また誘って下さい」

「そっか、俺よりも佐伯主任か。蘭さんも会議に途中参戦ってとこだろうね。誘っていいなら連絡するよ。それとも社交辞令だったかな?ははは」

本当にもう……。
この人はどこまで私のことを見透かしているんだろう?
やっぱり私、苦手だ。
"龍崎貴浩"という、男が。

「あの、私を連れて行きたい場所ってどこですか?」

「お、気になる?じゃあ本当に連絡してよ。名刺はこの前渡してるよね。できれば会社じゃなくて個人の携帯の方が助かる」

「個人の連絡先って、名刺に書いてありました?」

「蘭さん、もしかして気付いてないの?裏に手書きで書いといたんだけどな」

頂いた名刺を取り出して確認してみる。

「あ、書いてありました。これ、貴浩部長の直筆ですか?」

「そうだよ。知らせたい人にしか教えてないから手書きなんだ。いつでも連絡まってるから」

貴浩部長って、こんな綺麗な字を書くんだ。

「それで、どこに連れて行ってくれるのか教えてくれないんですか?」

「やけに食いついてくるね。そんなに気になる?」



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