real face

宮本一弥という男

──金曜日。

今日はなつみんと飲み会だ。
久し振りだから、楽しみ……。

昨日はRYUZAKI工房から帰って、ワーセクとの会議に途中参加。
その後、会議の全体的な流れの説明を受け、私からも打ち合わせの報告。
帰宅したのは、21:00過ぎ。
家に帰った私を待っていたのは、母の手料理だった。

「今日は久し振りに張り切って作っちゃったから、まひろもたくさん食べて!明日もお母さんが食事作るから、心配しなくていいわよ。菜津美ちゃんと楽しんできてね。お母さん土曜日からまた検査入院だから、あかりや新や信のこと頼むわね。いつもごめんね……」

私の母は身体が丈夫ではない。
年に1回は心臓の検査のために大学病院に1週間入院するのだ。

「大丈夫だから!土曜日は仕事休みだから一緒に病院に行くよ。明日はなつみんと女子会楽しませてもらうね」

そう、今日はなつみんと飲み会。


「まひろ、まひろ、ちょっと!」

「なによ、イチにぃ!誰かに見られてたらどうするの」

トイレから出て来たところを宮本課長につかまり、周りに人が居ないか警戒しながらひそひそ声で話す怪しい上司と部下。

「あのさ、相談があるんだけど。今日の飲み会のことで……」

「ああ、なんだ。それなら小洒落たイタリアンレストランなんかじゃなくても、居酒屋で充分ですよ。そのほうが肩凝らなくていいし」

「そうか、よかった。……じゃなくて!有田さんに……」

「なつみんには仕事が終わり次第連絡くれるように言ってあるから大丈夫。他に何か?」

「いや、だから!俺とお前の関係について……」

「おい!蘭さん。こんなところで課長と何の相談してる?まさか俺の悪口でも言ってるんじゃないだろうな」

「あ、佐伯主任。違いますよちょっと課長からのセクハラをどうやってかわそうかと」

「お、おい人聞きの悪い!そんなんじゃないだろ。違うぞ佐伯、断じてセクハラなんて」

「はいはい課長。蘭さん忙しいんで返してもらいますよ」

佐伯主任に連行され、また書類作成の指示を受ける。
今日は早く帰りたいから頑張ってやっつけなくちゃ!
それにしてもイチにぃ、何を言いたかったのかな。


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