real face

佐伯翔真という男

「はあ~。幸せそうでいいなぁ」

イチにぃとなつみんは、幸せオーラに包まれている。

「ねえ、まひろんは好きな人いないの?」

「私、一応失恋したばかりなんだけど」

そういえば、そうだったな。
すっかり忘れていた……木原課長のこと。

「まひろ、失恋の傷の特効薬は新しい恋だぞ」

もう!自分が上手くいったからって。

「新しい恋か。今は仕事優先かな。恋している暇なんてないかも」

「ね、まひろんって佐伯主任とコンビなんでしょ!すごいね。佐伯主任って、どんな人なの?」

「佐伯主任?無愛想で、ぶっきらぼうで、人使い荒くて、とっても素敵だけど」

「とても素敵とは思えない言い方だな」

そういえば、私は佐伯主任のことをまだよく知らない。

「イチにぃは佐伯主任のこと、よく知ってるんでしょ?ラーセクに異動になる前のこととか」

「ああ、アイツは元々は営業部のエースだったよ」

「それなのに3年目で突然の異動。広報部がどうしても佐伯を欲しいって引き抜いたんだ。正にサプライズ人事ってやつだ」

「でも、エースだったんでしょ。営業部もよく承諾したよね。エースなら手離したくないんじゃないの」

「そうなんだよな。裏で取引があったんじゃないかとか、いろんな噂が飛び交ったけど、真相は謎だ。佐伯のスゴいところは営業力だけじゃないから、広報部でも期待以上の成果を上げたらしいけど」

「まひろん、そんな主任と仕事できるなんて!チャンスだね!!」

「……チャンス?」

「だって、佐伯主任を狙ってる女性社員って多いでしょ。まひろんが一番近くにいられるんだもん。チャンスだよ!!」

なつみんもかなり酔いが回ってきたみたいね。
顔が赤いのは、イチにぃのせいだと思ってたけど。

「佐伯主任は私のこと、奴隷程度にしか思ってないと思うけど。『俺に色仕掛けは無駄だ』なんてどっちがよ!私のファーストキス返して欲しいわよ!!」

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