real face
俺が席に戻ると同時に蘭さんを呼びつける、宮本課長。

「え、私がですか?」

「ほら、イケメン高校男子を助っ人に呼べば……」

「それって、休日出勤じゃ……」

2人の会話は途切れ途切れにしか聞こえないが、蘭さんも特に嫌がっているようでもなかった。
やっぱり、なんでもかんでも引き受ける主義なのか……。

別にいいじゃないか。
俺には関係ないんだし、イベントがどうなろうと知ったことではない。


──翌日。

『佐伯先輩がヘルプ要員だって上村課長から聞いていたのに。なんで蘭さんなんですかー?課長からの指名なのによく断れましたね先輩』

「俺がヘルプだとお前も嫌だろうと思って。迫田のために断ってやったんだ。蘭さんは俺のパートナーだから、なんか問題あれば俺に言えよ。よろしく頼むな」

関係ないと思いつつ、無関心ではいられないんだな俺も。
なんでなんだろうな……。

『蘭さんって同期なんですけど、彼女は高卒でしょ。4つも年下なんすよねー。今までほとんど接点もなかったし。研修くらいでしか。妙に大人びてて近寄りがたいオーラ放ってるっていうか。先輩ならそのオーラにも負けないでしょうけど』

"近寄りがたいオーラ"ね。
それなら無理に近付いてくれるなよ、迫田。

「ま、仕事はデキる方だから。イベントは慣れないだろうけど大丈夫だろ」

『分かりました。一応同期だし、仲良く頑張りますよ。ちゃんと先輩にも報告しますから』

「そうしてくれると助かる。宜しくな迫田」


──日曜日。

今日も特に予定は入れていない。
販促イベント、今日だったな。
ショッピングモールのイベントスペースであるらしいけど。

あのショッピングモールにケーキ屋があったはずだ。
買いに行くか、今日。
美味しいと評判で雑誌でも紹介されているとか言ってたな……父さんが。


──11:15。

ショッピングモールのケーキ屋"Many・cakes"にケーキを買いに来た。
父さんと俺が食べる分と、この前もらったケーキのお礼にプレゼントするため。

新と信にお好み焼きのお土産を持たせたら、翌日には容れ物の中にケーキが入って返ってきた。

『姉貴と妹の手作りだから、先生と翔さんにも食べて欲しくて!』なんて。

……美味かった。
チーズ味のパウンドケーキって言ってたな確か。
父さんも「美味いなコレ!!」って気に入ってたみたいだし、取り合うようにしてあっという間に完食。
多分、今まで食った中でも間違いなくナンバーワンだ。
あれ以上に美味いケーキなんて見つけられる気がしないが、せめて美味しいと評判の店で買いたかった。

「いらっしゃいませ!」

いつもなら店員の接客を断るところだが、今日は敢えてこっちから質問してみる。

「若い女性に喜ばれるのってどんな感じですか?」


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