real face
「そうだ、まひろに聞きたいことがあったんだ。昨日、修一と話していたら、やたらと俺に突っ掛かってくるんだ。適当に交わしていたんだけど、アイツ気になることを言ったんだ。向こうに旅立つ直前、まひろから言われた一言が忘れられないって。どんなことを言ったか覚えているか?」

えっと……なんだっけ?
さっき思い出したのは、シュウにぃから言われたことの断片だったけど。

私がシュウにぃに言った言葉?
あの時は、シュウにぃからしつこく迫られてウンザリしていたような気がする。

ひとりの男として見てくれ、とか。
5年で帰ってくるから待っててくれ、とか。

あ、それから。
こんなことも話したよね……。

『なあ、正直に答えてほしい。まひろは俺のことをどう思っているんだ?』

『大好きな"従兄"だと思ってるよ』

『じゃあ、イチにぃのこともただの"従兄"なのか?』

『……そうだよ。2人とも、大事な"従兄"だとしか言えない』

『本当は、イチにぃのことが好きなんじゃねーのか?俺が居なくなったらイチにぃとヨロシクやるつもりじゃ』

『なによ、シュウにぃのバカ!!そうよ、私シュウにぃよりもイチにぃの方が好きなの。男として見るのにどっちか選ばないといけないんなら、私は……イチにぃを選ぶ』

…………!!

私、そんなことをシュウにぃに言ったんだ!?
だ、だけど、この発言をイチにぃに教えるわけにはいかない。

「私がシュウにぃになんて言ったのかって?覚えていないけど『頑張ってね』みたいなことを言ったんじゃないかな……」

なにか言いたげな、イチにぃの視線を感じる。
でもこんなことまで正直に言うつもりはないし。
だって……言えるわけない。
墓場まで持っていくことに決めた。
誤解を招いたら後々面倒だし、ね。
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