real face
「……本音スイッチ、入ってたな」

出た!本音スイッチ。

「だから、アイツもその気になってるってことだ。よかったな、まひろ」

「な、なによ。私はまだ付き合うつもりなんて……」

「まひろ、今までに彼氏がいたことってあったか?」

ちょっとイチにぃ!
知ってるくせに……わざとらしい。

「いないわよ!悪かったわね!!」

「ははっ、そうかそうか。高校でのお前はよく知らないからな。まあでも高校生のころはガリ勉だっただろ?彼氏なんて作る暇なかったんだな」

むむぅ……。
その通りだけど、なにか問題でも?

「彼氏どころか、友達も作らずに必死に勉強したもの。いい会社に就職するためにね!」

「可哀想な高校時代だったんだな。でもシャイニングに高卒で入れたなんて快挙じゃねーか。あの広報部の上村女史以来だぞ?」

上村女史……って、上村課長!
彼女も高卒で採用されたんだ、知らなかった。

「翔が営業から広報に異動になったのは、上村さんが翔を広報に欲しいって熱烈ラブコールを送ったからなんだ。ちょうどあの頃のアイツにはいろいろあったみたいだから、結局は異動できてよかったのかもしれないけど」

「いろいろって?」

「おっと、喋り過ぎたかな。お前は彼女だろ?自分で本人に聞いたらどうだ。教えてくれるかどうかは分からないけどな。ま、翔にとってはリハビリも兼ねてるのかもしれないな。お前らいいコンビだと思うぞ」

リハビリって、一体なんの?
よく分からないけど、お互いにメリットがあるってことなのかな。

「まだ、聞けてないんだろ?お前にとって初めてのアレのこと」

アレって……アレ、しかないよね。

「聞けないよ。聞こうとしたけど、あの日のことすっかり忘れてしまってるんだから……」

私のファーストキス。

あまりにも突然すぎて、どうしてあんなことになったのか今でも不思議で仕方がない。

< 84 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop