real face
車通りからは少し距離があるし、背を向けているから直接は見えないけど、時折車が走って通りすぎるのが分かる。

公園には人気もなく静かな空間が2人を包んでいた。

こういう時って何を話せばいいのだろう?

更に一口カフェオレを口に含むと、主任が私の方に視線を向けて口を開いた。

「……俺たちの今の関係、言ってみて」

……………え?
これって何の確認?

「簡単に言えば"上司と部下"ですよね?」

「………そっちじゃなくて」

そっちじゃないってことは……。
アッチってこと……?
私に言わせたいの?

「一応付き合ってるんですよね。恋人って関係になるんでしょうか?」

「じゃあ、蘭さんにとって俺は"上司であり彼氏"ってことになるよな」

上司であり、彼氏……?

「そうですね。そうなりますよね……」

上司であり彼氏なんて、響きがなんか大人な付き合いって感じ…。

「さっきから、他人事みたいな言い方だな。そんなんで他人から見て"恋人同士"に見えるのか、俺たち」

他人から見て……って?
ハッとして周りを見回そうかとしかけたけど、あからさまにキョロキョロしてはまずいかと思い止まる。
目だけ動かして、見える範囲に人がいないことを確認して安心した。

「もう!誰かから見られているのかと思ったじゃないですか!!」

「いつ見られるか分からないだろ。ところで……蘭さん」

言いながら、2人の間の距離をジワジワと縮めてくる主任。

「は、はい……?」

ちょっと近づいただけなのに、ドキドキが止まらなくなってきた。
明らかにさっきまでとは違う雰囲気を纏っている主任が、低い声で囁くように呟いた。

「あんまり男慣れしてないようだけど、男女交際の経験は?」

なっ!なに、突然!!

「ごっ……ご想像にお任せします」

顔が沸騰したように熱い。
もちろんそんなの有るわけないに決まっているけど……。

「そっか分かった。ということは、キスも未経験ってことになるのか」
< 87 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop