【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


すると祖父はソソファーにどっしりと体を預けたまま、
先方と話を始めたようだった。


その数分後、「先方は明日で大丈夫らしい。ホテルはうちのホテルに決まった。13時だ」
祖父はそう言うと「なら明日の午後、光輝頼んだぞ」っと応接室を後にした。


応接室のドアが開いた途端に、俺の指導係兼父の第2秘書を務める新田が姿を見せる。
その背後には、俺付きのシークレットサービスを学生時代から努める、新田の息子である聖仁(きよひと)。



「ならっ、オレは戻ります」


竣佑は自身が請け持つ支社の方へと移動していく。


「聖仁、明日の13時からお見合いすることになった。
 うちのホテルまで送ってもらえるか」

「かしこまりました。
ご自宅の方へ、お迎えに上がります」

「後、うちのコンシェルジュの山内に連絡がとりたい」

「山内ですね。
 移動車の中で連絡をいれます。

 まずは、お車へ」


実家を出てエントランスにとめられた車に俺が乗り込むと、
聖仁は後部座席のドアを閉めて周囲を警戒しながら運転席へと体を滑らせた。


車を走らせて数分、聖仁はすぐに山内へと電話をつなげた。



「光輝様、山内でございます」

「山内さん、忙しいのにすいません。
 明日より俺のマンションに妻となる人が入居します」

「光輝様の奥方様ですか。
 それはまことにおめでとうございます」

「急で申し訳ないが、今夜中に俺のマンションを改装してもらえないだろうか」

「かしこまりました。
 大至急、手配いたします」

「宜しく。
 今日はシークレットサービスの新田と共に行動しています」


用件のみ告げると運転をする聖仁は、
ハンドルを握りながら笑ってた。


「やっぱ、お前ってスケールが違うわ。
 マンションの改装って、普通今から頼むか?」


契約者と雇い人の関係でありながらも神前悧羅学院の時代の同級生であり、
クラスメイトでもあった時間は、こうして二人きりになったとき自然に姿を覗かせる。


「今から依頼しないと、明日の夜に間に合わないだろう」

「で、お前の婚約者になるやつは?」

「蒔田如月だよ」



聖仁にその名を告げた途端、アイツは盛大に運転席で溜息をついた。



後部座席のシートに体を預けながらゆっくりと目を閉じる。



俺の脳裏には悧羅校時代から蓄積され続けた、いろんな如月が脳裏に浮かび上がる。

そして……『きさと付き合うようになったよ」っと、
ある日、突然宣言した真梛斗の声。
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