【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

夜、カチャリと音が聞こえる。


いつもはすぐに反応して迎えに行くのに、
今日は出迎える勇気がなくて。


そのまま部屋にこもって、
気が付かないふりをして作業を続けてた。


するとノック音が聞こえて「如月、入るよ」っと光輝の声が聞こえた。


入ってきた途端、「三橋から聞いた。病院は?」って問われて、
首を横に振ると、
すぐにスマホをスーツから取り出して何処かへと連絡しているみたいだった。



「ありがとう。今から向かいます」


そう告げて電話を切ると、
今度は再びスマホで電話をかける。

その電話の主は聖仁さんみたいだった。


「裕真に連絡を連れて病院の手配は出来た。
 連絡しておいてくれるみたい。

 聖仁がすぐに迎えに来る。
 出掛けようか」


そう言って、
光輝はアタシの着替えを待って部屋から連れ出した。


5分も経たないうちに、
聖仁さんの迎えを告げるコールが鳴り、
アタシはエレベータで光輝と共に降りた。


車に乗り込んだ後も、
光輝は何も話してくれなくて……ただただ時間だけが流れていった。


病院に着いた後も裏口から院内に入ると、
連絡をして待っていてくれたスタッフさんが
アタシを産婦人科の診察室へと誘導した。



「それでは、ご主人様はこちらで手続きを。
 奥様は、奥で先生がお待ちしています」


そう言って中の部屋へと案内された。


診察室に入ると、なされるがままに時間が過ぎて、
外で待機していた光輝が中へと呼ばれた。


「おめでとうございます……」


そう言って先生はアタシたちの妊娠を祝福してくれた。


病院を後にしたアタシたちは、
聖仁さんの車でホテルのレストランへと向かっていた。



レストランでフルコースを食べた後、

「如月……今日は凄く嬉しい時間を有難う。
 これは俺からのプレゼント」

そう言って光輝は会話を切り出した。


「えっ?」


戸惑うように切り返したアタシは、
光輝は更に言葉を続けた。
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