【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
もう……驚きすぎて、
どうしていいかわかんないじゃない。
泣きそうになるアタシ自身を必死にこらえながら、
何か可愛げのない言葉を探してた。
「狭霧さん、お時間です」
楽屋へと声がかかる。
「ほらっ、如月、時間だよ。
しっかり頑張っておいで」
その言葉と同時に、
互いの唇が僅かに触れ合う。
「行ってきます」
ゆっくりと体をはなした後、
アタシは相棒を手にして、
ゆっくりとステージ袖へと歩き出した。
ステージ袖にまで近づいてきた光輝が
緊張してるアタシをさりげなく支えてくれる。
照明がゆっくりと落ちて、
アタシが登場するSEが静かに流れ始めると、
会場内から一斉に歓声が広がっていく。
そんな歓声を目いっぱい浴びながら、
アタシは光の世界へと踏み出していった。
金糸雀は空を羽ばたく。
光輝が話してくれた夢のように、
アタシも精一杯の小さな翼を広げながら。