【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
3.レプリカのアタシ - 如月 -
ばーばの法事の日。
突然告げられた結婚話。
美織じゃあるまいし、アタシの身に降りかかるなんて思わなかった。
その日、アタシは気絶させられてジジイによって部屋の中に閉じ込められた。
深夜、意識が戻って両手を後ろでくくられたまま、
必死にもがくアタシをあざ笑うように、ババアが姿を見せる。
「如月さん、少しは時間を考えなさい。
星奈さんと陽奈さんは、旧子爵家に相応しい女性として育っているというのに、
本当に如月さん貴方と言えば、何時までも音楽なんてだらしないものに夢中になって。
一族の恥さらしもいいこと。
お母さまがどれだけ、貴方の評判に世間様から笑われて苦労しているか知らないでしょう。
将来的に貴方に、お母さまの後継ぎとして頑張っていただきたいと最初の頃は考えてましたが、
今は星奈さんか陽奈さんのどちらかで考えています」
まくしたてるババアの台詞。
いつもはそんな何気ない言葉に、内心傷ついているアタシも存在するのに、
今日はそんなこともない。
ただババアの台詞が、右から左へと流れては消えていく。
何も残らない。
「如月さんっ。聞いているのですか?
本当にっ、せっかくお父様が話をまとめてくださった縁談ですよ。
貴方のような方を、妻にと言ってくださる方。
明日は、しっかりとこの家の恥さらしにならないようになさい」
言いたいことをヒステリックに吐き出したババアは、
アタシの縄を解くことなく何処かへと消えていった。