【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

4.繋がれた揺り籠 -光輝-


「如月さん、今日はお疲れさまでした」

夜のディナーを終えホテルの一室に戻った後、彼女に声をかける。
彼女は居心地悪そうに俺の方に視線を向けた。


「あのっ……。
 アタシはどうしたらいんですか?
 改めて詳しく聞かせてください」


彼女は部屋の隅で立ち尽くしたまま、俺に問いかける。


「まず、如月さんはそちらのソファーにかけてください。
 俺は飲み物を用意してきます」


そう言うと奥にある小さなキッチンスペースで、
冷蔵庫で冷やしてある飲み物を取り出してグラスに注ぐ。

そして二つのグラスをトレーにのせて、彼女の元へと運んで静かにテーブルへと置いた。

「どうぞ。
 弟の親友がハーブを育てていてね。
 フレッシュハーブティーを冷やしておいたんだ。

 ハーブティーが苦手じゃなければいいんだけど……」


そう言いながら彼女に促す。

彼女は暫くの間、グラスと睨めっこした後、
覚悟を決めたようにグラスを掴んで、一息ゆっくりと着いた後に、口元へとグラスを運んで一口飲みこむ。


「そんなに覚悟しないと飲めないもの?」


彼女のそんな飲み方に失礼とは思いながら、クスクスと笑いを零してしまう。


「ミントは嫌いなの。
 あんな歯磨き粉みたいな味だったら嫌じゃない?

 ハーブってミントも入ってるんだから」


そう言って彼女は小さく言い返してきた。


「で、そのハーブティーは飲めそう?
 ミントは入ってないはずなんだけど……」


彼女がミントを好まないのは俺だって知ってる。
だからそんな好まないものをわざと入れようだなんて思ってない。


「悪くないわ。
 悪くない……それ以外の感想なんて難しいわよ」


そう言って彼女は再び黙り込んで、
ハーブティーを少しずつ飲み始めた。


そんな彼女を見つめながら時折、グラスの中の氷を揺らしながら、
俺もハーブティーを飲む。
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