【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「お帰りなさいませ。旦那様、お嬢様」
「ただいま、三橋」
「何もかもが素敵なお部屋ですよ。
お嬢様。
お嬢様は今日からこの家で、お暮しになるんですね」
「三橋、彼女を部屋に案内して着替えさせた後、
彼女をつれてリビングへ来てください」
そう声をかけると自室に入って、すぐに着替えを済ませてリビングへと向かう。
そして彼女が着替えを済ませて、リビングに着た後、
彼女の前に静かに、スマホを2つ並べた。
一つは彼女がずっと持っていて、実家に帰った際に没収されたスマホ。
そしてもう一つは、俺の電話番号のみ電話帳に登録してある、真新しいスマホ。
彼女にその2台のスマホを手渡すと彼女は、
スマホの画面を見つめながら静かに涙を流し始めた。
スマホの待ち受けには、今も思い出であり最大の存在。
真梛斗と過ごした時間が切り取られるかのように、
待ち受け画面に移し出されていた。
その待ち受けを視線の先で捉えた時には、
チクリと鈍い痛みが広がった。
繋がれた揺り籠は、今も羽ばたくことなど許してないように、
関わった人たちをあの場所へととどめ続けた。