【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「如月さん……」
降り注いだその声は光輝さん。
でも、どうして……。
「聖仁、そいつを警察に。
映像提供が必要なら、由毅【なおき】に。
この繁華街は早谷のカメラが点在している」
「かしこまりました」
そう言うと、シークレットサービスの人は警察官の方に説明に向かう。
すると次の途端、アタシの体は光輝さんの腕の中にすっぽりと包まれた。
「あぁ、ヨシさんとハツさんが持たせてくれたお土産が残念なことになっちゃったね」
そう言いながら彼は二人が作ってくれた、お惣菜の容器を拾い集めて再び紙袋へと戻して、
手に取った。
「光輝様、全て警察へと引き継ぎました。
お車の方へご案内します」
シークレットサービスの人は、そう言うと光輝さんとアタシを守るようにして、
車へと誘導しマンションまで送り届けた。
車内でもずっとアタシを抱きしめたまま過ごしていた光輝さん。
あのまま殴られてたら良かったのに……。
助けられた嬉しさが芽生えるのが許せなくて、
可愛げなく、心の中で、何度もそう呟き続けた。
こうして真梛斗じゃない別の優しさで、
記憶が蝕まれてゆくのが許せなくて……。