【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


「ねぇ、何時から来てたの?」

「あっ、LIVE?
 最初は、悧羅祭かなー。学祭で聞いて、それから……高架下で見つけて、公園でも見つけた」


ってサラリと言うけど、それってアタシの活動してる場所全部ってことじゃない。

「アンタも神前悧羅だったんだ」

「そう。オレは悧羅校。
 狭霧もだよね。蒔田如月さん」


サラリと本名まで呟かれて、アタシは固まった。


そこからアイツはアタシの殻をドンドン破って、中へ中へと入りこんできた。
アイツの蜜を知って、体がアイツを欲するほどに。

心がアイツを求めるほどに。


アイツがアタシに刻み込んだ刺青は、
あの日まで、とても鮮やかに輝いていた。

だけど今は……何処か寂しくて。


その輝きが今以上に消えてしまうのが怖くて、
どんなに優しくされても、それを受け入れたいとは思えない。

消せない刺青に縋るように、アタシをアタシを保ち続ける。




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