【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
学院時代、クラスの奴らから
『生徒総会の奴らは、孤独に見える』と俺たちに向かって投げかけたやつが居た。
それを傍で聞いていた真梛斗はこうやっていった。
「生徒総会のメンバーは決して孤独なんかじゃない。
総会メンバーは、一般生徒よりも強い絆で繋がってるよ。
ただ生徒総会メンバーがそんな風に見えるのなら、
それは孤独じゃなくて孤高。
孤高は一人でいるのが好きだったり、人間関係にを煩わしさを感じてたりして、
自分のリズムでブレずに生活している人をさすんだ。
さっき君たちがいった孤独は、自分が一人であると感じる心理。
自分自身がなりたくてなったわけじゃないんだよ。
孤独に怯えるより、一匹狼になるよりも、誇り高き孤高でありたいと思うよ。
それって少し、かっこよくないか?」
そう言って周囲の皆を黙らせたアイツの言葉がふと過る。
孤独か……。
そんな風に感じることすらなかった俺が、
真梛斗を失って如月と共にいてもなお、心の傷を埋めることすら出来ずに時間だけが過ぎているのか……。
もっと傷をスムーズに抱くことが出来たら、如月との付き合い方もまた変わるんだろう。
だけど、まだ今の俺は手探りのままで……。
ふいにノック音が聞こえると、
俺と共に対応に当たってくれている聖仁の父親である新田が姿を見せた。
「光輝様、現場はかなり深刻な状況のようです。
暫くの間は、A工場の再開は厳しいかと思います」
「新田、従業員の保護を最優先に。
避難や保護を求めるものは、率先して行ってください。
向こうにある提携ホテルにも連絡を取り、救助及び一時避難場所として使用が出来るように連絡をいれました。
新田は申し訳ないが、今から、かの国の現状視察に出向いて貰えるかな?
俺はA工場の代わりに、その商品を手がけられるよう他国の提携B工場に向かう」
そう……。
この審査が俺と竣佑、二人の後継者問題だけで終わるなら、
こんなに慌てなくても構わない。
ただこのトラブルを解決しなければ、三杉と契約している提携会社にも商品が納品できずに迷惑がかかる。
それだけは阻止しないといけない。
そう言うと、再び聖仁が到着したのを待って車に乗り込むと実家へと向かう。
実家の専用金庫からパスポートを取り出して握りしめると、
両親に現状を伝えて如月のことを頼むと、そのまま聖仁の運転で空港へと向かった。
聖仁が手配していた早谷のビジネスジェットに乗り込むと、
そのまま孤独を忘れるかのように仕事へと没頭した。