【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

そのままの体制で少し眠ってしまっていたみたいだった。
気が付いた時には明け方になっていた。



マナーモードにしていたスマホが、
点滅をして通知が入っていることを知らせる。


手を伸ばして開くと、そこにはアイツから連絡が入ってた。




如月さん
もう眠っている頃かもしれませんね。
起こしてしまったらすいません。

会社のトラブルの関係で今は日本を離れています。
仕事が終わり次第、すぐに戻ります。

光輝




ただそれだけの短い連絡。


そんな連絡ですら、真梛斗を思い出させる。






体に気を付けてくださいね。

如月





可愛げのない短い文章を既読がわりに送り返すと、
アタシはゆっくりと自分の部屋から出てキッチンへと向かった。


アイツと暮らすようになってから味を覚えたハーブティー。


ハーブなんて歯磨き粉の味と思ってたアタシが、

歯磨き粉の味をさせていたのはハーブの中のミントという種類で、
アタシにも飲めるハーブティーがあることを知った。




三橋の存在か、はたまたアイツの存在か知らないけど、
アタシが飲めるハーブの種類が増えた。


パントリーからラベンダーを取り出すと瓶の中から、
ティースプーン一杯をティーポットに注いでお湯を注ぐ。


待っている抽出時間に、ラベンダーの香りが広がっていく。


ボーっとしながら、ダイニングの椅子に腰かけてテーブルに
肘をついたまま抽出を待ち続ける。


少し鬱々していた気分が穏やかになっていく。


抽出時間が終わった後も、暫くの間は香りを楽しんで飲み始めた。
飲み始めたころには、かなり明るさが広がり始めた。



さて、今日も一日頑張らないと。

アイツが居ないなら、昨日連絡があったことだし、澪と遊ぶのもいいかなー?
おばちゃんとおじちゃんにも久しぶりに会いたいなぁーっと、
お世話になってた居酒屋を思い出す。



結婚式、おじちゃんとおばちゃんも招待したら来てくれるかなー。



なんてそんなことを思い浮かべた瞬間、
アタシの理性はまたその感情をシャットダウンしてしまった。



ラベンダーティーを飲み干してしまっても、
今度は心が晴れることなくて、次の気分転換に思いついたのは入浴。



ティーカップを流しへと運んで、
さっとスポンジで洗い終わると食器洗い機へと片付けて、
着替えを準備して浴室へと向かった。




服を脱いで浴槽へと体を沈めた後、
そのままお湯の中まで顔を沈めていく。



ブクブクと息をするたびに、上に向かって伸びているであろう水泡。
息苦しくなったところで、お湯の中から顔を上げて、顔の水分を手で拭った。


無意識に手を伸ばすのは、真梛斗から貰った片側のピアス。
今のアタシが唯一、真梛斗と物質的に繋がっているもの。


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