【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
アタシが真梛斗と繋がっているものは、
存在の不安定な思い出と物質的な繋がりを示すこの半分子にしたピアス。
真梛斗の血を閉じ込めたブラッディ―ピアス。
そして……真梛斗と過ごした時間を閉じ込めた、
スマホで撮った写真たち。
スマホが壊れてしまったら消えてしまうデーター。
何時、忘れてしまうかわからない不安定な思い出という存在。
そんな中、このピアスだけは
他のもの以上に真梛斗を感じさせてくれるものだった。
「ねぇ、真梛斗。
アタシがアイツを好きになったら真梛斗は怒る?」
なんて得られるはずのない答えを求める。
このピアスを外したらアタシは真梛斗を封印して、
新しくアイツの胸に素直に閉じ込められるのかな?
ふとそんな風に感じた。
それは同時にアタシの中で罪悪感も目覚めさせる。
そんなループを払拭するように、
浴槽から出てシャワーを頭から浴びながら髪の毛を洗い始めた。
何時ものように髪を洗って、シャンプーを二回。
その時、髪がピアスに引っかかった気がした。
だけどすぐに耳元に手を伸ばすと、ピアスはまだそこにある。
安堵したように髪を洗い続けてトリートメントをしている間に体を洗う。
そして再び髪の毛をすすぎ始めた時、
ふと伸ばした耳元にいつも球体は存在してなかった。
慌ててシャワーを止めて排水溝をあげて探す。
洗い場の隅々を探して髪の毛をバサバサと何度しても、
ピアスは出てこなかった。