【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「お食事の準備が整いました」
雇っていたキャビンアテンダントから声がかかり、俺は横たえていた体をゆっくりと起こした。
「現在、予定どうりのフライトです」
顔を上げた途端に、そう告げるスタッフ。
「有難う」
テーブルに並べられた食事を、
機内で味わうことが感覚的に出来ないまま早々に食べ終わると、
暫くすると着陸を告げるアナウンスが響く。
今の俺は、俺が為すべきことをきっちりとする。
何度何度も、自分に言い聞かせる意識の傍で、
遠ざかろうとする足音だけが、不気味に響いていた。