【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

14.叶わない今 信頼できる仲間 - 光輝 -


「光輝様、お疲れ様でした」
「お疲れ様。新田のお陰で後処理も助かりました」
「全ては、光輝様のお力です。
 この件は社長にも私から報告させていただきます。
 それより奥様は、発見されたのでしょうか?」


遠慮気に問いかけてくる新田。


「そちらは日本で頼れる親友と、由毅に任せてますから。
俺もホテルに戻って荷物をまとめ次第で、日本に帰国します」

「帰りも早谷の会長より、チャーター便が手配されているようです。
 お気をつけてお帰りください」


新田はそう言うと、
俺を治安情勢が悪化して操業停止を余儀なくされた工場の事務室から送り出してくれた。


事務所の扉の外には聖仁が控えていて、
俺に気が付いた途端すかさず護衛にまわる。


「車を裏口にまわしています」

「ホテルに戻って荷物をまとめ次第、
 早谷のチャーター便で帰国する」

「そのように由毅様から連絡が入っています。

 光輝様が事務所で仕事をされている間に日本から幾つか連絡がございます。

 早谷・三杉・綾音・瑠璃垣・伊舎堂のシステムを追跡して、
 それぞれのカメラの情報で奥様の足取りが追えそうだと言うことです。

 由毅様からの連絡ではフレンドキッチン藤川商店街通店の駐車場側の防犯カメラには映っていたとのことで、
 早谷警備のスタッフが周辺を中心に捜索中とのことです」


車に乗り込むまでにも、
聖仁は俺に如月に関する情報を報告してくれる。


後部座席のドアを開けて待っていた運転手が、
俺たちが乗り込んだのを確認してドアが閉じられ車はホテルへと動き出した。


車内に入って、スマホを取り出して電源を入れる。


光彩でロックを解除すると、
留守番電話マークとSNSの通信マークが日本からの連絡を告げる。





光輝、電話をしたけど忙しそうだったからこちらに。

如月さんは見つけたよ。
今は叔父さんに任せてる。
 
仕事が終わったら連絡入れてよ

一綺





一綺からの連絡に、俺は思わず息を吐き出す。


「光輝?」


聖仁がビジネスモードから、
オフモードに切り替わって俺を覗き込む。
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