【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「今日はここで休むでしょ。
っと思って、布団は一式ソファーベッドに用意しておいたから。
また明日、顔を出すよ」
そう言うと一綺は病室を出て行った。
「それでは光輝様、明朝参ります」
同じように聖仁も言葉を続けて、俺に一礼すると病室を出ていく。
「三杉さん」
ノック音と共に病室の外で声が響く。
「はい」
病室の扉を開くと、外からは看護師さんが姿を見せた。
「妻がお世話になっています」
「一綺様より、ご主人が戻られたことを伺いました」
看護師は挨拶を終えると、ベッドサイドへと近づいて、如月の様子を確認する。
「明日、宗成先生の回診時に詳しい経過のお話があるかと思います。
それでは何かございましたら、ナースコールを押してください。
現在、病棟内は消灯時間ですのでご協力をお願いします」
そう言って、静かに頭を下げると看護師さんは退室していった。
読書灯を付けて病室の電気を消すと、
スーツの上着を脱いで、ネクタイを外し、シャツのボタンを二つほど外す。
そのまま如月が眠るベットの隣に椅子を置いて腰かけると、
彼女に手に触れながら、俺は何時の間にか眠り落ちてしまっていた。
翌朝、俺が目覚めた時も、如月が目を覚ます気配はなかった。
毎日のように、如月の病室に三橋が通い、一綺が顔を出し、由毅が顔を出し、
如月の友達だと尚毅が告げた女性が姿を見せる。
俺は病室と会社の往復をしながら、時間だけが過ぎていった。
ただひたすら、如月が目覚めるのを待ち続ける日々。
俺の中に居続ける真梛斗と共に、
祈り続ける時間が過ぎた。