【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
15.欲しいものとガラクタ - 如月 -
目が覚めた時、アタシは真っ暗な空間に居た。
まだカーテンの開いていない薄暗い部屋。
視線を動かして、
この場所が何処かの病室らしいことを自覚した。
そして次に視線を今アタシ自身が眠っているベッドへと向ける。
アタシが眠るベッドサイド、うつぶせに眠るアイツの姿を見つけた。
……バカ……。
こんなところで寝なくても、アタシは何処にもいかないって。
思わず小さく呟いて、
そっとアイツの茶色の髪に手を伸ばす。
指先に触れるアイツの柔らかな髪。
ベッドの中、もぞもぞと動いて少しでも近くでアイツを見たくて体を動かす。
そんなアタシの動きに気が付いたのか、
うつ伏せになっていた体が急に持ちあがって、
「如月」っと、アタシに布団越しに抱き着くアイツ。
☆
何してんの?
アタシは大丈夫だよ
☆
不安そうにアタシを抱きしめるアイツに向かって、
可愛げのない言葉をいつものように吐き出したつもりなのに、
アタシの声は響かない。
アイツは今もアタシを抱きしめたまま離れようとしなくて、
最初は少し抵抗していたアタシも、
観念して暫く黙ったままアイツを見つめていた。
あれ?
だけど、どうして光輝がいるの?
確か……入籍したあの日、
光輝は仕事で日本を離れた。
その翌日に、ピアスを失くして、
アタシは真梛斗を求めて海に行って……。
えっ?
待って。
だれにも言わずに海に行って、
アタシは確かに入っていったはずなのに、
なんでアタシはここで助かってるの?
助かってるのは現実で、
今、目の前に光輝が居るのも現実。
海に居るはずのアタシが病院にいるってことは、
誰かがアタシの体を助けたってわけで……。