【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
そう考えると、ちょっと怖くなる。
光輝のこの態度……。
えっ?
もしかしなくても、アタシはやばかったんでしょうか?
うーん。
でもアタシ的には、久しぶりに真梛斗にあってすっきりした感じもあるし、
今がよければOKって感じ?
そんな感じで自己解決をして、
再び、アタシに抱き着いたままの光輝に声をかける。
だけど口の中に入っている管が邪魔をして、
声を発することが出来なくて、
アタシはアイツの体に片手で触ることしかできなかった。
アタシが触れた手に気が付いたアイツは、
頭元のナースコールのボタンを押して、読書灯に明かりをつけた。
眩しい。
思わず目を閉じたアタシと、
スピーカーから「どうしました?」っと声が聞こえたのが同時。
「夜分にすいません。
今、妻が気が付きましたので連絡を」
そう言って光輝はマイクに向かって告げる。
「わかりました。すぐに伺います」
暫くの後、病室の明かりが付けられて、
看護師さんと医者らしき人が部屋へと尋ねてきた。
その後、気分はどうですかーっとか、
話しかけながらアタシの様子を診察していく。
「今のところ経過は順調そうです。
三杉さんは心停止の状態で発見されたんですよー。
とりあえず気管挿管してるので抜管しますねー」
そう言って口の中に入っていた大掛かりな管を外すと、
今度は酸素マスクの方を口元へとあてられた。
「今はまだ声が出しにくいと思うので、
今日はこのまま大人しく眠ってくださいね。
朝になったら主治医の宗成先生が回診に見えると思います。
それでは、後はお願いします」
医者らしき人は、
名乗りもせずにそのまま病室を慌ただしそうに出ていく。
「ご主人も奥様の意識が回復されてよかったですね。
奥様も、もう暫く体を休めてくださいね」
看護師さんによって、
再び掛け布団を丁寧にかけなおされるアタシ。
「有難うございました」
病室を出ていこうとした看護師さんに、
光輝は深々とお辞儀をした。
「如月、もう少し眠って。
俺が此処に座って見てるから」
そう言ってアタシに笑いかけるアイツ。
だけどその表情は疲労の色が濃いくて、
どっちが病人かわかんないかも知れない。
「アタシも寝る。
だからアンタもちゃんと眠って。
目の下に、隈作ってさ。
どっちが病人かわかんないよ。
鏡見たら?」
確かに声が出しにくかったけど、
何とか掠れさせながら出た声は、
酸素マスクでかなりくもった聞こえにくい声で。
あぁ、やっぱり可愛げない。
もっと有難うとか、
相手を気遣う言葉とか素直に言えればいいのに。