【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
アタシがずっと欲しいもの。
それはアタシが安心して暮らせる居場所。
ずっと家族の中に居場所がないと思ってたアタシは、
アタシの居場所を欲し続けた。
だけど、居場所なんて……そんなに簡単に見つかるものじゃなくて、
自分の気持ちを埋めるように、本当に欲しいものを、
比較的手に入りやすい物品にすり替えて、欲するままに手に入れ続ける。
でもそれは……、一時的に自分の欲求を満たすだけのもので、
それ以外にはなり得なくて、
時がたつにつれて、役に立たないガラクタへと姿を変えていく。
本当に求めたものは手に入らなくて、
すり替えた物欲は、ガラクタにしかならなくて。
そんな現実が無性に嫌だった。
真梛斗が好き。
欲しいものが真梛斗で、真梛斗が手に入れられなくて、
すり替えて好きだと思い込んだのは光輝だったらどうしよう。
そんな不安がないわけじゃない。
だけど……そんなこと、グタグタ考え続けても、
今のアタシに、光輝が必要な存在だって言うのは確かだと思うから。
ちゃんと今のアタシは、
何時かはガラクタになってしまうすり替えた欲しいものじゃなくて、
心の底から欲しいと願っていた諦めかけていたものに手を伸ばそうとしてる。
今、アタシの傍にいてくれる人は、
アタシにそれを与えてくれようとしてる大切な人だから。
それだけは、はっきりと言い切れる。
彼の口から出た「まなと」の名前が気になる。
だけどその「まなと」が、アタシの知る真梛斗とは限らない。
どんな形が待っているのだとしても、
出逢って間がないままに夫婦になったアタシたちだから、
ゆっくりと恋人のようになれる時間が増えていけばいい。
少しずつ。
今は少しずつ……そんな優しさを感じていたくて。
アタシは、今のアタシに出来る精一杯の甘え方で、
必死に伝えようとしていた。